さてさて、2005年の初夏、製品のスペックを決める段階になってきました。

化粧品の製品開発には個別のアイテムのコンセプトを設定しながら、その内容成分を精査していくタスクが必要でした。

化粧品についてまったくの素人であったためその内容成分についての研究が必要で、いったいどんなものを体や顔に使っているのかはまったく未知の領域でした。

日本には多くの主張があり、化粧品成分についての本があり、またネット上にも関連情報がたくさんあります。

また人間の体や皮膚のメカニズムについての文献を読み漁り、何が良くて悪いのか、ニュートラルな立場で情報を集めていきました。

たくさんの危険視成分は存在しましたが一般的には、保存料や合成着色料等には発癌物質が含まれており、使用によって危険性が危惧されるとのこと。
また、自然界から取れるものでも太陽光に作用してシミの原因になるもの等もある等々。

今回アグロナチュラ製品は、せっかく新しく作るので、一つ一つ成分を調べて日本にて分かり得るだけの情報から、出来たらより安全だと思われるものを作ろうとしたのです。

そういうこだわりの化粧品が一つくらいあっても面白いかなと思いました。

しかし、石鹸以外に泡立ち体の汚れやあぶらを除去、また水分と油分を乳化させる界面活性剤については少々悩みました。

使い勝手を考えると特にヘアシャンプーなどは合成界面活性剤を外せません。一方合成界面活性剤は皮膚の上部組織を壊し穴を開けるために、使わないほうが良いという意見も多くあります。

いろいろ悩みましたが、ビオリーブスシリーズの洗浄系アイテムに薬用サボン草というハーブの絞り汁から取れるサポニンという天然の界面活性剤をメインで使い、補助としてヤシ油から得られる合成の界面活性剤を用いることにしました。

ビオリーブスシャンプー類は泡立ちよく、髪を洗ってもギシギシになりにくい特徴があります。

一方、とことん成分にこだわる人向けに、アントス工房で石鹸ベースの洗浄系アイテムを作ったのです。

特に今までの石鹸シャンプーは、ミニマムな原料のみを使った「守りのケアアイテム」といったイメージでしたが、アントスシリーズでは石鹸ベースでありながらお肌や髪に有効に成分が働きかける「攻めのケアアイテム」を、石鹸ベースで世界初のオーガニック認定付のものを作ってみようと考えました。

それがアントス石鹸シャンプー、ボディシャンプーシリーズです。

皮膚に優しいように蜂蜜等の酸性成分を用いてペーハー値を弱アルカリにしたり、石鹸をヤシ油よりもオリーブ油石鹸の割合を増やしたりした結果、泡立ちが一般的な商品より少なくなってしまいました。

こちらの開発には、松沢さんや綿貫さんをはじめとした社内の女性に何度もモニターをしていただきました。本当に何度髪を洗っていただいたかわかりません。ありがとうございます!

改良を重ねてきましたが、通常の界面活性剤シャンプーより泡立ちを得るのが難しいですので、泡立つポンプに入れて使うと使い勝手が良いと思います。
ボディソープはタオルやスポンジを使わず、洗顔と同じように手で洗うのが良いです。

キサンタンガムという食用増粘剤以外は、まったくの化学成分フリーというこだわりのシリーズです。

さらにアントスシリーズについては、よく自然化粧品で使われる、いわゆる「レシチン」(本当は水添レシチンという合成界面活性剤)さえも含まないハンドクリームやリップクリームなど特徴のある製品を、なるべく危険視される成分を用いないで作るというコンセプトで工房に依頼して開発していきました。

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写真はアントスハンドクリームを界面活性剤入り・無しで開発していたときのサンプル。この時で48種類ぐらいのサンプルがありました。

実際にオーガニックがどれだけ体に良いのか、危険視される成分が体に悪いのか、本当のところはわからないのが真実と思います。

ただ、ブランド名も無名、資金も大手化粧品メーカーのように潤沢でなく、派手な広告も出来ない謎のインディーズブランドには、コンセプトとしてこだわりの成分で攻めるしかないと考えていました。

この何でもある日本市場の化粧品の世界にわざわざ無名の弱者が参入するコンセプトとして、また20年間もたいして儲からない有機農業を続けてきた農家の製品をプロデュースするためには。

常に作っているオーガニックの成分を使い有機認定までとること、せっかくなので危険視されている成分は極力入れないこと、またそういう成分にこだわる人をターゲットにして、安全性がより高いと声高らかに謳うこと、それだけが製品上の競争優位の源泉だったのです。

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